現在、日本では2人に1人ががんに罹り、3人に1人ががんで亡くなっています。

厚生労働省の「2021年人口動態統計」によると、がんによる死亡数は、男性が22万2467人、女性が15万9038人。 部位別でみると、男性は肺がん、大腸がん、胃がん、すい臓がん、肝臓がんの順に多く、女性は大腸がん、肺がん、すい臓がん、乳がん、胃がんの順になっています。

厚生労働省「全国がん登録 罹患数・率 報告 2019」によると、部位別の罹患数では、男性は前立腺がんが最も多く、大腸がん、胃がん、肺がん、肝がんの順です。女性数は、乳がんが最も多く、大腸がん、肺がん、胃がん、子宮がんで、上位5部位が全がんに占める割合は、男性が66.7%、女性が63.6%となっています。

医療の進歩により、がんは治癒できる病気になりつつありますが、罹患すると生活の質を大きく下げ、治療にも時間やお金がかかります。できるなら罹りたくないですね。

がんの発症には栄養も関連

がんの発症には栄養も関わっています。発がんに関連がある栄養因子と関連の高いがんの種類と、発がんのリスクを下げると考えられている栄養因子と関連するがんの種類をまとめました。

発がんに関連がある栄養因子と関連の高いがんの種類

栄養因子確定的可能性あり
アルコール口腔・咽頭がん
食道がん
大腸がん(男)
乳がん
肝臓がん
大腸がん(女)
赤肉、加工肉大腸がん  
アフラトキシン(※1)肝臓がん  
βカロテンサプリメント肺がん  
塩漬魚  上咽頭がん
高カルシウム食  前立腺がん

※1=ナッツ類や穀類にみられるカビがつくる毒 

発がんのリスクを下げると考えられている栄養因子と関連するがんの種類

栄養因子がん
食物繊維大腸がん
野菜類食道がん、胃がん、咽頭部がん
ニンニク大腸がん
果物類咽頭部がん、食道がん、肺がん
βカロテン、ビタミンC食道がん
リコピン前立腺がん
牛乳大腸がん
サプリメント(カルシウム)大腸がん
サプリメント(セレン)前立腺がん

このほか、ビタミンE、葉酸、銅、亜鉛、n-3系多価不飽和脂肪酸(αリノレン酸、EPA、DHA)、ポリフェノールなども発がんの過程でがん化を抑制してくれます。一方で、βカロテンサプリメントが肺がんの発がんに関連があることや、n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量が多いと腎がんの罹患リスクが高いという研究報告もあります。

サプリメントの過剰摂取で治療に影響

また、がん罹患後も栄養素の影響を受けることがあります。抗がん剤のメトトレキサートは葉酸合成を阻害することで薬理作用を発揮するので、サプリメントで葉酸を過剰に摂取していると、抗がん剤の効きが悪くなる可能性があります。

抗酸化作用のあるビタミンEを過剰に摂取すると、活性酸素の酸化作用の一部である放射線治療に影響が出る可能性もあります。これらのことから、栄養は安易にサプリメントで摂取するのではなく、まずは食品から摂取すること、サプリメントを使う場合は過剰摂取に注意することが必要です。

基本的に、肥満、メタボリックシンドローム、成人後の体重増加は細胞のがん化にプラスに働き、エネルギー制限はマイナスに働きます。「American Cancer Societyのガイドラインが推奨する、がん予防のための食習慣や生活習慣」をも参考にして、気になる方は生活習慣を見直してください。

American Cancer Societyのガイドラインが推奨する、がん予防のための食習慣や生活習慣

生涯を通じた適正体重の維持
・摂取カロリーと消費カロリーのバランスに注意
・何歳になっても太り過ぎに注意
・現在太り気味ならば、適正体重に戻して維持

よく体を動かすライフスタイル
・成人の場合:中等度からややきつめの運動を1回30分以上で週5日以上。できれば45~60分間、積極的に運動することが望ましい
・小人の場合:中等度からややきつめの運動を1回60分以上で週5日以上

野菜中心の健康的な食生活
・健康によい食材や飲料を摂取
・色々な種類の野菜や果物を毎日500g以上摂取(※2)
・製粉されたものより全粒を摂取
・加工肉や赤身肉は避ける

アルコールはほどほどに
・女性の場合、アルコールは1日約17g(ビール1缶)まで、男性はアルコールで約35g(ビール2缶)まで(※3)。

※2=日本人の場合、「野菜と果物を併せて1日400g以上」が目安
※3=日本人の場合、男性はアルコールを23g(日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、焼酎2/3合、ウィスキーやブランデーならダブル1杯、ワインならボトル1/3程度)が目安。女性はその半分が目安。

参考:
がん病態栄養専門管理栄養士のための「がん栄養療法ガイドブック2019」
国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所予防関連プロジェクト

管理栄養士・今井久美